「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」の著者・小川榮太郎氏と飛鳥新社への申入書

 2017年11月21日  

小川 榮太郎 殿
株式会社飛鳥新社
代表取締役 土井 尚道 殿

株式会社 朝日新聞社
広報部長 後田 竜衛

 

申 入 書

 

 小川榮太郎著・株式会社飛鳥新社発行の書籍「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」(本書という)は、弊社による「森友学園」「加計学園」に関する一連の報道を「戦後最大級の報道犯罪」「虚報」「捏造」などと決めつけています。
 本書は、弊社が取材で入手した文書について紙面で報じているにもかかわらず、「安倍の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず」「『総理の意向』でないことが分かってしまう部分を全て隠蔽して報道し続けた」としています。また、実際には紙面で報じている当事者の発言等を「殆ど取材せず、報道もしていない」としています。さらに「加計学園」報道に関して、弊社がNHK幹部と「密議」や「共謀」して「組織的な情報操作」を行ったと記載するなど、荒唐無稽な持論を展開しています。
 弊社の一連の報道は、森友学園に国有地が大幅に値引きされて売却された不透明性・不自然さを指摘するとともに、約50年ぶりとなる加計学園による獣医学部の新設をめぐり、公平で適正であるべき手続きに疑念を抱かせる複数の文書の存在を明らかにしたものです。国民が当然抱くであろう疑問に答えるのは報道機関の使命であり、そのために現場の記者たちは内部文書を掘り起こすとともに、さまざまな関係者の証言を集め、事実に基づいて報じています。
 それを弊社に一切の取材もないまま、根拠もなく、「虚報」「捏造」などと決めつけるのは、弊社の名誉・信用を著しく傷付ける不法行為であり、到底見過ごすことはできません。
 貴殿及び貴社に厳重に抗議するとともに、すみやかに弊社に謝罪し、事実に反する部分を訂正し、弊社が被った損害を賠償するよう強く求めます。
 以下に、事実に反する主な箇所を示します。
 本書面受領後2週間以内に、書面にて真摯にお答えください。
 なお、本書面は弊社コーポレートサイト(http://www.asahi.com/corporate/)で公表いたします。

【事実に反し名誉・信用を毀損する主な箇所】

①「朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」(本書題名)及び「無双の情報ギャング 朝日新聞に敬意を込めて捧ぐ」(本書2頁)との記載。
 上記の記載は、事実に基づかない、弊社に対する著しい誹謗中傷であり、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

②「〝スクープ〟はこうしてねつ造された」(本書の帯)との記載。
 弊社の「森友学園」「加計学園」に関する一連の報道にねつ造はありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

③「仕掛けた朝日新聞自身が、どちらも安倍の関与などないことを知りながらひたすら『安倍叩き』のみを目的として、疑惑を『創作』した」(5頁)との記載。
 上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

④「『安倍叩き』は今なお『朝日の社是』なのだ」(19頁)との記載。
 弊社は「安倍叩き」を社是としたことは一度もありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

⑤「朝日の記者側から、何らかの訴訟を構成すれば記事にできるとの助言があった末でのこの記事だという」(22頁)との記載。
 豊中市議会議員の木村真氏に対し、弊社の記者が訴訟を促すような助言をしたことはありません。上記の記載は、事実に反し、弊社及び記者の名誉・信用を著しく毀損するものです。

⑥共産党や民進党の議員による国会質問や答弁について「初報をスクープした朝日新聞は、これらの質疑や会見内容を全く伝えていない」(26頁)との記載。
 弊紙はこれらの質疑や会見を少なくとも2回、紙面で報じています。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。なぜこのような間違いが生じたのか理由をお示し下さい。紙面で報じた2本の記事は以下の通りです。
 ●2017年2月14日付 朝刊社会面「学園『ごみ撤去1億円』」
 ●同月18日付 朝刊社会面「国有地売却巡り国会で答弁」

⑦「見出しは上から順に、『籠池氏「昭恵夫人から、口止めとも取れるメール」』『お人払いをされ、100万円を頂き金庫に』『夫人から財務省に、動きをかけて頂いた』」と昭恵叩きの虚報三連発」(99頁)との記載。
 記事は、虚偽の証言をすれば偽証罪に問われる可能性がある参議院予算委員会の証人喚問における籠池泰典証人の発言の要旨を記載したもので、上記見出しは発言内容の重要な部分を見出しとしたものです。籠池氏が上記のとおり発言したことは真実であり、「虚報」には該当しません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

⑧「『総理のご意向』が書かれた同じ文書のすぐ下に、『総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか』と書かれている。もし『総理の指示』があったらこういう言い方にはなるまい。指示がなかったからこそ『総理からの指示に見える』ような操作が必要だ――この文書はそう読める」「この日、朝日は後に政府が調査・公開した文書八枚(一部ずれがある)を既に入手していたが、『総理の意向』『官邸の最高レベル』という、安倍の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず、未公開のまま、今日に至っているのである」「朝日新聞は、最初から世論の誤導を狙って、『総理の意向』でないことが分かってしまう部分を全て隠蔽して報道し続けた」(151~152頁)との記載。
 弊社は、上記8枚の文書について、その内容を本年5月17日、18日、19日の紙面で紹介しており、「安倍の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず」という指摘は事実に反します。
 また、上記8枚の文書のうちの「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題する文書には、今治市での大学設置の時期について「総理のご意向」で最短距離でプロセスを踏んでいると聞いているとの記載があり、次いで「大学設置審査のところで不測の事態(平成30年開学が間に合わない)ことはあり得る話」との懸念が記載され、そのすぐ後に、「『国家戦略特区諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。平成30年4月開学に向け、11月上中旬には本件を諮問会議にかける必要あり」と記載されています。一連の記載に沿って、普通の読み方をすれば、「総理のご意向」を実現するために、国家戦略特区諮問会議決定とし、総理からの指示に見えるようにするのがよいとの趣旨であることが明らかです。弊社が、入手した文書について「『総理の意向』でないことが分かってしまう部分を全て隠蔽」した事実はありません。また、世論の誤導を狙って報道したこともありません。
 本書の上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
 なお、獣医学部新設の時期に関しては、文科省が公表した「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」と題する文書で「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。成田市ほど時間はかけられない。これは官邸の最高レベルが言っていること」との記載もあります。

⑨「ある人物が朝日新聞とNHKの人間と一堂に会し、相談の結果、NHKが文書Aを夜のニュースで、朝日新聞が翌朝文書群Bを報道することを共謀したとみる他ないのではあるまいか」(154頁)との記載。
 弊社の記者や幹部が、加計学園の問題について「ある人物」や「NHKの人間」と一堂に会したことはありませんし、報道について共謀したこともありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

⑩「朝日が裏取りもせずにスクープを決断」(156頁)との記載。
 弊社は複数の取材源に確認したうえで当該記事を掲載しています。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

⑪「実は、朝日新聞は、加計学園問題を三月十四日の第一報からこの日まで二ケ月もの間、小さな記事三点でしか報じていない」(158頁)との記載。
 弊紙はこの間に少なくとも10本の記事を全国版(東京本社発行)に掲載しています。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
 10本の記事は以下の通りです。
 ●2017年3月23日付 朝刊3面「『国家戦略特区』選定 野党が批判」
 ●同月28日付 朝刊4面 「『二つの学園』論戦の的」
 ●同年4月1日付 朝刊4面 「加計学園の獣医学部設置 地理的条件、昨年11月浮上」
 ●同月6日付 朝刊4面 「『特区』調査へPT」
 ●同月8日付 朝刊4面 「昭恵氏言動にやまぬ追及」
 ●同月11日付 朝刊社会面 「特区の獣医学部など諮問」
 ●同月15日付 朝刊4面 「加計学園問題 論点は」
 ●同日付 夕刊1面 素粒子
 ●同月19日付 朝刊4面 「特区に加計学園 首相の影響否定」
 ●同月29日付 朝刊4面 「元加計学園監事の最高裁判事任命は『異例』 慣例通り日弁連が推薦」

⑫「以下は、私の推理である。加計問題をスキャンダル化できる特ダネを探していた朝日新聞、NHK幹部らは三月以来、密議を繰り返してきた。その中で、文科事務次官を天下り斡旋で事実上更迭された直後だった前川喜平との接触が始まる」(159頁)及び「加計スキャンダルは朝日新聞とNHKとの幹部職員が絡む組織的な情報操作である可能性が高い」(160頁)との記載。
 弊社が加計学園の問題についてNHKの幹部と密議をしたことはありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

⑬「現時点では取材拒否が多く」(160頁)との記載。
 弊社の取材窓口にはもちろん、弊社の取材班にも、貴殿からの取材申し入れはこれまで一度もありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
 なお、弊社は加計学園問題について、直接取材いただいた複数のメディアに対し、弊社としての見解や事実関係をお答えしております。

⑭「加計学園問題は更にひどい。全編仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報である。(中略)今回は朝日新聞が明確に司令塔の役割を演じ、全てを手の内に入れながら、確信をもって誤報、虚報の山を築き続けてゆく。何よりも驚くべきは、前川喜平たった一人の証言で二カ月半、加計問題を炎上させ続けたことだ」(164頁)との記載。
 上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
 「全編仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報」「確信を持って誤報、虚報の山」「前川喜平たった一人の証言で」とは何を指すのか及びその根拠をお示しください。
 また、「朝日新聞とそれに追随するマスコミは、大騒ぎを演じた二カ月半、これらの当事者に殆ど取材せず、報道もしていない。前川一人の証言だけで加計問題を報じ続けた」(165頁)との記載。
 弊社は文部科学省関係者や当事者、関係者に幅広く取材をし、報道しております。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

⑮「『官房副長官が指示』メール」ともあったが、それは加計学園の獣医学部新設を決定する過程に副長官萩生田の指示があったと見える文書が新たに見つかったことを指す。萩生田は、この文書内容をただちに全面否定したが、朝日新聞は逆に、萩生田と文科省が文書の内容を巡って対立しているとして、萩生田の言い分を全く度外視した紙面を作り続けた。この文書内容は後に文科省自身も誤りを認め萩生田に謝罪している。もはや、朝日は偽文書を元に政治家を叩くことにさえ躊躇がないのである」(217頁)との記載。
 弊社は萩生田氏の言い分を度外視しておらず、本年6月16日から17日にかけての朝夕刊で3回にわたり見出しを付して萩生田氏の言い分を報じています。また、萩生田氏を叩く意図は弊社にはありません。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。
 3本の記事は以下の通りです。
 ●2017年6月16日付 朝刊1面 「『官房副長官が指示』メール」
 ●同日付 夕刊1面 「『ご意向発言 認識ない』」
 ●同月17日付 朝刊1面 「内閣府説明、文科省と対立」

⑯「時系列で読み解くと、朝日がなぜこの文書をひた隠してきたかがよくわかるはずだ」(256頁)及び「こうして八枚いずれの文書も、徹底的にサボタージュしてきた関係省庁を、藤原、義家、松野、萩生田らがそれぞれの立場から解きほぐし、圧力団体や麻生副総理の意向に配慮しながら、行政手続きと規制突破を両立させるべく腐心している様を伝えている。朝日新聞をはじめマスコミが『総理の意向』以外の部分を徹底的に隠したのはその為だったのだ」(267~268頁)との記載。
 弊社は、本年5月17日、18日、19日の紙面において上記の8枚の文書の内容を紹介しており、その中で、藤原、義家、松野、萩生田各氏の行動や発言について触れています。「総理の意向」以外の内容についても報じていることは前記⑧の通りです。上記の記載は、事実に反し、弊社の名誉・信用を著しく毀損するものです。

以上